
去る年2月17日、目黒のprimeNumberのオフィスにて、primeNumber User Group(pUG)主催の「#p_UG 東京:kintoneデータ活用LT大会」を開催しました。
primeNumber User Group(通称pUG、パグ)は、データマネジメントの重要性を広め、業界のリーダーを増やすことを目指してprimeNumberが立ち上げたコミュニティで、定期的にイベントを開催しています。
今回はpUGとして初めて、ノーコードとAIで業務のシステム化や効率化を実現するアプリがつくれるクラウドサービス「kintone」をメインテーマとし、現場でのリアルな実践事例をLT形式で発表していただきました。
- Terraform Provider for TROCCOを活用してkintone連携を IaC 化
- TROCCOとkintone+BigQueryで配送オペレーションを自動化
- kintoneへのリバースETLでWEBサイトを自動更新。最短1営業日以内での更新が可能に
- 小さな改善が大きな変化を生む。kintoneとTROCCOを組み合わせた業務改善の実践事例
- 公開予定の新機能を含めたTROCCOとCOMETAの最新アップデートを紹介

Terraform Provider for TROCCOを活用してkintone連携を IaC 化
株式会社メドレー 人材プラットフォーム本部 CTO室 データマネジメントグループ マネジャーの山邉哲生さんは、Terraform Provider for TROCCOを活用してkintone連携設定をコードで管理するIaC化の実践事例を紹介いただきました。

ジョブメドレーをはじめとするメドレーの人材プラットフォーム事業では、AWSのプロダクト本体からTROCCOを経由してGCP上のBigQueryへデータを連携してdbtでモデリングを行い、さらにリバースETLでkintoneへ書き戻すという構成でデータ基盤を運用しています。

山邉さんは「データ活用が進むにつれ、GUIからのジョブ設定ではワークフローの描画が重くなる、どのジョブが何をしているかが見た目でわからなくなる、設定する人によってブレが出る」といった課題が生じてきたと説明。新たなプロダクトへの対応が必要になるたびに、大量の初期設定を手作業で行わなければならないという課題もあると補足しました。
そこで山邉さんが採用したのがTerraform Provider for TROCCOです。1月にリリースした「v0.23.0」では転送先kintoneをサポート、kintone連携設定を含むTROCCOの各種設定をすべてコードで管理できるようになりました。山邉さんは以前からこの機能を要望していたとのことで、「半年弱で対応いただけて非常にありがたい」という感謝のコメントをいただきました。

Terraform Provider for TROCCOを使ったIaC(Infrastructure as Code)化によって、テーブル定義から転送ジョブ作成・ワークフローへの追加までを一気通貫で対応できるようになったほか、設定や運用ポリシーの一括修正も可能になったと山邉さんは説明。kintone運用側で作成したクエリを連携処理とセットでGit管理下に置けるようになった点も大きな成果として挙げられました。
今後はスキーマ変更の検知から自動でプルリクエストを作成し、レビュー後にterraform applyまでを自動化することも視野に入れているとのことです。
TROCCOとkintone+BigQueryで配送オペレーションを自動化
STORES株式会社でデータ基盤の保守開発を担当する佐藤 翔太さんからは、配送業務のオペレーション改善事例を紹介いただきました。

STORESのBPR部門は、プロダクトをユーザーに提供するまでに発生する社内業務の運用・改善を担う部署です。佐藤さんによれば、もともとは管理画面からのデータ作成で完結していた端末配送の業務が、配送要望の多様化によってスプレッドシートでの手動運用が必須となりました。その結果オペレーションの複雑化による作業工数の増加が課題になっていたそうです。
この課題に対して佐藤さんはBPR部門主導で配送要件を整理した上で、BigQueryへ配送データを集約してkintoneにデータを連携する構成へと移行しました。

現在のシステム構成はkintoneからBigQueryへのソース引き込みとリバースETLをTROCCOで運用、さらに追加要件として生じたkintoneからGCS(Google Cloud Storage)への連携にもTROCCOで対応しています。
TROCCOを採用したメリットについて佐藤さんは、SaaS間のソース引き込みやリバースETL処理のスクリプト、実行基盤の管理工数などが削減できたほか、kintoneのフィールドコード取得も自動化できたと説明。ワークフロー機能でGCS連携なども素早く対応できるようになり、自作のスクリプトで対応していた部分が大幅に効率化されたと語りました。
今後はビジネス部門へのTROCCO展開も進めていく方針とのこと。佐藤さんによればすでに社内でレクチャー会が実施されており、スプレッドシート連携では一部ユーザーでの利用を開始しています。BPR部門から「複数のkintoneアプリを組み合わせてデータを利用したい」という要件も挙がっており、データマート機能を活用して対応することも検討しているという今後の展望も示されました。
kintoneへのリバースETLでWEBサイトを自動更新。最短1営業日以内での更新が可能に
さくらインターネット株式会社 マーケティング部 データ戦略グループ マネージャーの渡邉 敦さんからは、kintoneへのリバースETLでWebサイトを自動更新する事例を紹介いただきました。

さくらインターネットでは、パートナー企業の情報をWEBサイトに一覧掲載しています。以前、パートナー登録から公開までは現状で最短5営業日がかかっており、チームをまたぐ更新ではリードタイムが長くなる、JSONの手修正による人為的ミスやエンジニアのリソース不足などが公開までの課題として挙げられました。
この課題を解決するために渡邉さんは、TROCCOのリバースETLを利用したkintoneのハブ化を実現。Snowflakeへ蓄積済みのデータをTROCCOのリバースETL機能でkintoneへ連携し、GitHub Actionsがkintoneからデータを取得してWEBサイトへ自動反映する構成です。

kintoneを中間ハブにしたことで、非エンジニアでも文言やロゴを修正できる編集画面が用意でき、APIトークンでの認証と必要なデータだけを抽出するといったセキュリティ面が向上しました。TROCCOのkintoneコネクタを使うことで複雑な認証の負担を軽減できたとし、「実際の連携処理を半日ぐらいで構築できた」と語りました。
この結果、これまでかかっていたリードタイムを80%削減し、最短5営業日の公開が最短1営業日以内に短縮されたと渡邉さんは説明。依頼作業自体が不要になり、レビュー負担も軽減されたことで、作業ミスもほぼゼロになったとの成果が語られました。
渡邉さんは「データ基盤は現場で扱うには少し複雑だが、kintoneを活用して業務に必要な情報だけを抽出することで、非エンジニアでも直感的に運用できる環境が構築できた」とコメント。開発工数を最小限に抑えつつビジネスの機動力を最大化させる効果的な組み合わせだとまとめました。
小さな改善が大きな変化を生む。kintoneとTROCCOを組み合わせた業務改善の実践事例
株式会社マクアケ 開発本部 IT基盤部の山田 史朗さんは、自社で運営する応援購入サービス「Makuake」の基幹システムとkintone・TROCCOを組み合わせた業務改善の実践事例を紹介いただきました。

山田さんはIT部門をゼロから立ち上げ、さらに社内AI推進やkintone講座の講師なども担当。コードを一切書かないノーコードでの実現を一貫してポリシーとされています。
今回山田さんが発表したのは、現場のリクエストにすぐ応えられるよう、kintoneとTROCCOを組み合わせた業務改善についてです。
山田さんが最初に取り組んだのが、基幹システムのデータをより使いやすくするための試み。基幹システムのマスターデータをTROCCOを経由しkintone上に集約したことで、次のステップへ展開できるようになりました。

続いて行ったのがセールス部門の営業活動のアシストで、Makuakeのプロジェクト掲載実績をセールス部門が使用しているCRM(SFA)へ連携。さらにプロジェクト終了後のアンケートや振り返りのアポイント調整、キャンペーンやメールマガジンなどの配信業務も、kintoneからメール送信できるプラグイン「kMailer」で自動送信するフローを構築しました。
その後も各種申請やフォーム、お申込書の電子署名締結などをkintoneで一元化。FormBridgeでフォームを作成してそのURLをkMailerで送付、顧客が入力したデータをkintoneに蓄積して、確認後にクラウドサインで電子契約に移行するフローの電子化も実現しました。

データ分析もkintoneとTROCCOを活用。kintoneに蓄積したデータをTROCCOでBigQueryへ転送し、Looker Studioでダッシュボード化することで、新規お申込みの進捗やアンケート結果、メールマガジンの開封状況などを可視化できていると山田さんはコメント。kintoneのデータをZapier経由でSlackへ通知するという連携も紹介していただきました。
山田さんはTROCCOとkintoneの活用で、「基幹システムの改修を待たずに今すぐ現場のリクエストに応えることができることがメリット」と説明。小さな改善が大きな変化を生むことの重要性を会場へ語りかけました。
公開予定の新機能を含めたTROCCOとCOMETAの最新アップデートを紹介
鈴木からは前回のpUG以降で新たにリリースした新機能を紹介。「転送先カスタムコネクタ」は、ユーザー自身が独自のコネクタを作成してTROCCOに組み込める機能で、鈴木は「可能性は無限大」とその魅力をアピール。転送先カスタムコネクタを活用することで、Backlogに課題を起票する、LINE公式アカウントからメッセージを配信する、Notionデータベースへ外部からデータを連携するといった活用が可能になります。

「通知先HTTP」は、ジョブの成功や失敗の通知を、これまでのSlackやメールに加えてMicrosoft TeamsやChatworkなどにも送れる機能です。またこの機能を利用することで、エラー発生時に自動でGitHubやBacklogに課題を起票するという使い方も紹介されました。
新規コネクタは、約15個が追加されました。Microsoft Dynamics 365 CRMやTikTok広告、Amazon Adsなど広告系・CRM系を中心に拡充を続けています。

BigQueryのWorkload Identity Federationへの対応も新たに加わりました。これまでのサービスアカウントキーによる認証と比べて鍵の管理が不要になり、よりセキュアにBigQueryへ接続できるようになります。
イベント当日にリリースした新機能として、BigQueryのデータマート書き込みモードの拡充も紹介。これまでの「全件洗い替え」「追記」に加え、IDベースで重複なく増分データを更新できる「増分更新」と、値が変わった際に有効期間を保持しながら履歴として管理できる「SCD Type 2」の2つが追加されました。これによって、これまで自由記述モードで工夫したSQLを書くことで対応せざるを得なかったユースケースも、誰でも使いやすい形で実現できるようになりました。

COMETAの新機能としては対話型AI機能のアップデートを紹介。確認事項があるときにAIが選択肢を提示したり、クエリのエラーを修正してくれるようになりました。このほか、BigQueryとSnowflakeのメタデータ相互連携機能やメタデータ一括生成、用語集のアクセスコントロールといった機能も新たに加わりました。

さらに近日リリースを予定していたTROCCOの新機能として、データ品質チェック機能をイベント限定で先行して紹介(本機能は2月25日に正式公開しています)。データマート作成後のテーブルに重複や欠損ががあるときに、アラートを出したりジョブを失敗扱いにしたりできる機能で、データ品質の担保をより体系的に行えるようになります。
また、PMMの髙畠からはkintoneを活用した新しい取り組みとして「kintoneSFAテンプレート(仮題)を紹介。kintoneのアプリ構成をテンプレートセットとして投入することで、入力難易度を大きく低減することができます。また、SFAが未導入であってもこのテンプレートを利用することで、AIを活用して営業の属人化を排除し、チーム全体のパフォーマンスを最大化するソリューション「primeBusinessAgent」も紹介されました。

今回は初めてkintoneをテーマとしたpUGでしたが、各種SaaSからデータを集約するETLだけでなく、リバースETLでkintoneへ戻すというケースが複数の登壇社から挙がるなど、データ基盤の「出口」としてのkintoneの活用方法もご紹介いただきまし。また、各社ともビジネス部門が主導して業務改善を推進する文化が根付いているだけでなく、AIを活用してIaC化やノーコード開発のハードルを下げていることも印象的でした。
改めて登壇者の皆さま、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
次回のpUGは、2026年3月17日に「EC×データ基盤の試行錯誤を語る会〜みんなの工夫とTROCCO活用術〜」を開催予定です。ぜひconnpassからご参加ください。