
6月13日(金)、キャリアイベント「スタートアップか大企業か。データと体験談で読み解くこれからのキャリア」を開催しました。
https://primeumberevent001.peatix.com/
転職市場が活発化する中で、スタートアップと大企業、どちらがいいのかと迷われる方も増えてきているのではないでしょうか。そんな中、皆さまがキャリアを考える一助となれるよう、転職エージェントおよび企業人事が持つデータや知見と、実際にスタートアップ・大企業で転職してきた経験者のリアルな体験談を通じて、それぞれのキャリアの魅力と実態をお伝えするイベントです。
第一部ではエン・ジャパン株式会社 執行役員の峯崎直哉さん、primeNumberの採用責任者遠藤祥浩さんから、大企業とスタートアップ間の転職事情やキャリアの描き方について、データや事例を元にお伝えしました。
▲アーカイブ動画
データから読み解く!なぜ今、大企業からスタートアップへの転職者が増加しているのか
峯崎:私はエン・ジャパンの執行役員として、主にAMBIやミドルの転職というハイキャリア向けサービスの責任者を務めております。私自身は新卒入社のため転職経験はありませんが、出向でスタートアップを一社経験して、現在は弊社のグループ会社で、20名規模のスタートアップの取締役も務めております。また、スタートアップのグロースのアドバイスやコンサルティングもしていますので、そのあたりの知見が今日活かせたらなと思います。
遠藤:primeNumberのHRBPグループでHeadを務めています。転職エージェントとして合計10年ぐらい、企業の採用支援や候補者様の転職支援に従事してきており、一貫してスタートアップ企業を中心にご支援してきました。その後、マネーフォワードという会社のTalent AcquisitionのHeadとして、年間数百名規模の採用を推進してきました。昨年の6月にprimeNumberに入社し、現在は採用を中心とした人事業務を推進しております。
司会:では早速トークテーマに移ります。こちらはAMBIで算出された、大企業からスタートアップの転職者数推移グラフです。
峯崎:グラフの通りスタートアップが活況になっていて、転職者は年々増えています。
理由ですが、まずスタートアップそのものが変わってきています。過去は六畳一間で寝袋を使い、3〜4人で立ち上げるようなイメージがありましたが、今は環境も非常に良くなってきています。
年収も増加している部分が年々上がってきており、スタートアップも資金調達後はまず人材に投資をして、優秀な人と仕事をすることで事業のグロースの角度が変わることをよく理解するようになりました。
求職者側のマーケット状況も変わってきています。過去は長く1社で働くことが一般的でしたが、今は実力主義・ジョブ型と言われ、自分の経験がピンポイントで活かせる環境が広がっています。雇用形態もフリーランスや副業も増えており、事業のグロースにこういう人の力を借りたいという企業ニーズも出てきて、市場がここ5〜6年で様変わりしています。
スタートアップで求められるのは縦割りを越境するスキル
司会:スタートアップでこれまで人事をしてきた遠藤さんも同じように感じられますか?
遠藤:こんな大手企業の方が弊社を受けてくださっているのかという驚きをよく感じます。人事としてもエージェントとしても、大手からスタートアップに行きたいという方に対してスカウトを打つとすごく反応をもらえることもありました。
峯崎:大手の方を欲しがるスタートアップもたくさんいますよね。特にマーケティング、エンジニアリング、マネジメントなど、過去の経験がこれから成長していくスタートアップにとって非常に貴重なので、そういうニーズは増えています。
遠藤:我々のようなSaaS系の企業で、エンタープライズ系の企業にプロダクトを提案したい場合、ずっとスタートアップにいた方だとエンタープライズ攻略経験がない場合が多いんです。そこで外資の大きな企業や日系のSIerから来ていただくケースも結構増えています。
峯崎:大企業でよくあるのが、役割がすごくはっきりしていて、営業なら営業、企画なら企画、さらに企画の中でも細分化されることがあります。スタートアップはこうした感覚で働くことはなかなか厳しいですが、逆にそれが面白さでもあります。一人の人が営業も人事も見たり、こういうイベントもみんなでやろう、縦割りで分けずに協力してこの会社を大きくしようという熱量があるのも楽しさの一つです。
遠藤:私もいろんなスタートアップに携わってきましたが、その中で共通する面白さや、求められている要素は、縦割りされているところを越境するスキルです。いろんなボールが落ちているところで、それを自分から拾いに行って何か形にしていく、会社が成長していくためのアクションを取れることがすごく大事にされています。それを面白い、やりがいがあると思える方は、大手からスタートアップに行ってすごく活躍される傾向があります。
大企業側の変化:アルムナイとリスキリング
峯崎:一方大企業側で考えると、圧倒的なスケールで仕事ができることや、資金のない会社だと挑戦できないことに挑戦できる、世の中を変えていく手触り感は、大企業ならではです。しかし、そういった大企業でもスタートアップへのチャレンジで人が辞めたり離職が増えている状況で、各社が変化を起こしてきています。
大企業と聞くと1つの承認を取るのにハンコが10個必要とか、年功序列というイメージがあるかもしれませんが、それじゃダメだと言っているのが今の大企業の状況です。リスキリングという言葉も最近よく聞くと思いますが、50代、60代になっても新たに学ぶことが非常に大事で、60代でも活躍できる環境を整えていく。DXやITの時代に、こうした知識がゼロだとなかなか難しいので、それをちゃんと身につける環境を提供するなど、大企業側も人の成長に本気になっています。
遠藤:アルムナイは身近な話でもあります。私もJACリクルートメントのアルムナイに入っているんですが、高頻度で連絡が来ます。最近はアルムナイ向けのプロダクトを通じて会おうという連絡が来たり、「もう1回一緒にやらない?」という話が出ることもあります。
大企業は人的経営リソースが潤沢にあるのが特徴で、人の出入りがあった時に、出た人が戻ってくるだけでも会社の競争力が強くなる側面があるので、ある種合理的なアプローチだと思います。
峯崎:私は大企業側の人間ですが、うちでも先日卒業生が集まる交流会を実施しました。私は今執行役員・事業部長ですが、これをやりたいんだけどできないなという時に、アルムナイの先輩たちに声をかけたりしています。実際、私が一年目の時の部長が副業で教育の研修をやってくれるといったシナジーも生まれています。
あなたはどのタイプ?キャリア構築の3つのパターン
司会:スタートアップも大企業も受け入れ態勢を整えて、転職も活発化している環境で、次はキャリア構築の考え方にテーマを移していければと思います。
遠藤:「山登り型」「川下り型」「変化適応型」という3つのキャリア理論が、近年かなりメジャーになってきています。山登り型はある地点に向かってステップを登りながらそこにたどり着くイメージです。川下り型は、方向性の大枠は決まっているんですが、川下りをしていく中で岩場があったので方向を変えてからまた同じ方向に向かって進んでいくとか、浅瀬で水の流れが緩やかなのでスピードを出して乗り切るといったイメージです。
キャリアアンカー論、計画的偶発性理論、トランジション論という学説的な理論もあります。キャリアアンカー論のアンカーは錨(いかり)ですね。キャリアを築いていく時に絶対に譲れない大事にしたいものがこの錨に象徴されるもので、専門性や自立、安定、挑戦、社会貢献など、学術的に8つぐらい定義されています。
川下り型はスタートアップでのキャリアの築き方に密接に関連していて、これを象徴する理論として計画的偶発性理論があります。キャリアの多くの部分は偶然によって形作られるという考え方でその偶然をチャンスに変えて活かしていくための素質として、好奇心、粘り強さ、柔軟性、楽観性、リスクテイクに対する心理的ハードルの低さが挙げられています。
峯崎:私もすごく意識していたのがこの計画的偶発性理論、Planned Happenstance Theoryです。今成功者と言われる人たちの8割は計画していないという話で、皆さんも想定していないタイミングでの異動とか、人が辞めたからその人の役割になるとか、狙ってやれないことが起きますよね。でも、ちゃんと一生懸命目の前の仕事をして、チャンスが出てきた時に自信を持って手を挙げられる条件・状況を作っておくことが、まさにその偶発を呼び込むために大事なことです。
一方でどれにも共通するのは、続けるということです。過去と違って、この役職になったら、この仕事ができるようになったら一生食うに困らないということはまずない世の中に変化しています。エンジニアリングができればもうこの先大丈夫という時代もありましたが、今はAIが台頭してテクニカルスキルが陳腐化してしまうことも事実あります。いくつになっても時代の変化とともに自分自身が変化していくことが非常に大事です。
活躍する人材の秘密。PL思考 vs BS思考、どちらが有利?
司会:活躍できる人材の特徴を考える上で、PL思考とBS思考という2つの考え方についてご説明いただけますか。
遠藤:PLは損益計算書で、売上と費用、利益を見た時に会社の状態がどうなっているかを判断するものです。BSは貸借対照表で、会社の現在の状態を見る時に使うものです。見る時間軸が違い、PLは1年という短期間で見るもので、BSはずっと続いていくもので、過去からの積み上げが記載されていきます。
PLの中で売上を仕事に置き換えると、成果や評価、自分の収入になります。たとえばプロジェクトが成功したか、昇進したか、年収が上がったか、表彰されたかということです。一方の費用は、自分が仕事に対して投下してきたもの、つまり努力や時間など費やしたものです。
峯崎:BS思考寄りの人の方が活躍する傾向が強いです。仕事人生を点ではなく線で見ていく話で、この1年、この仕事をやりたいかやりたくないかという短期的な目線ではなく、中長期的にこの経験は語れるようになるかという視点ですね。チャレンジングなスタートアップで2〜3年働いた経験は、大手にいたままだったら得られなかった経験で、絶対どこかで生きてくる。自分の仕事の経験自体も投資だという捉え方をしていけるのは非常に大事です。
どの川(市場)の流れに乗るかを選ぶコツとは
司会:会場から質問も来ています。
峯崎:「大企業からスタートアップに転職された人で、年齢と職種でそれぞれどこの層が多いのでしょうか」という質問ですが、結論は本当にさまざまなんですが、人口の多いところが多くなるので、30代、営業職がボリュームゾーンです。ただ、今はスタートアップも年齢問わず人を求めていますし、大手側も昔のように新卒を育てるだけというよりは、必要なスキルを持つ人を中途でも採用しないと成長できないという考え方なので、基本的にはどの年齢、どの職種でも双方ニーズがあるのが今のマーケットです。
遠藤:「計画的偶発性理論において、どの川(市場)の流れに乗るかが重要だと思うが、選ぶ上でのコツは」という質問ですが、世の中の流れをちゃんと見ておく必要があります。たとえば、ソフトウェアの業界で開発が生成AIによってかなり効率化されていますし、別の職種でもAIを使って生産性がすごく上がっています。これだけの変革や技術革新が起きている領域やその周辺は急流で、ここに乗っかってみるのも面白いチャレンジになります。逆に流れは緩やかだけれども、自分の経験や自分のキャリアのBSを見た時に、自分がこの業界に入ったらこの流れをより加速できるという選び方もあります。
峯崎:いろんな人のいろんな持論があっていいと思いますが、成長環境を欲している人、仕事人生を楽しみたいという人は、いろんな挑戦ができるという意味で、成長市場という激流の中に身を置くのが楽しいんじゃないでしょうか。
個人のキャリアは戦略だと思います。私もビジネスの戦略を考える時に非常に大事にしているのが順番で、最初に市場、次に製品、最後に戦略、戦術という順番で考えていて、市場選びが非常に大事です。どんなに戦略が良くても市場を間違えたら勝てない。これを個人のキャリアに置き換えると、自分の土俵をどこに設定するか、自分が輝ける土俵をどう見つけるか、という話です。ここなら負けない、この会社なら輝ける、ここが好きなんだという感情でもいいと思います。自分がワクワクして本気になれる環境と、自分が戦う土俵はどういうところがいいのかを考え続けるのが非常に大事です。
(第二部へ続く)