
TBSラジオでは、radikoをはじめとしたデジタルプラットフォームの活用を積極的に進めています。こうしたプラットフォームから得られたデータを活用して、新たなビジネス価値を生み出すプロジェクトを、primeNumberのプロフェッショナルサービスとして支援しました。
上記の記事では、TBSラジオ総合戦略局の富田さまの視点で、プロジェクトの全容やデータ活用の成果等がまとめられています。今回は、プロジェクトを支援したprimeNumber CIOの山本さんの視点から、TBSラジオの取り組みや支援内容、データ基盤の特徴について詳しく紹介いただきました。
デジタルシフトしたラジオ業界の新たな収益源開拓にはデータ活用が必要不可欠
――プロジェクトが始まった背景を教えてください。
TBSラジオの富田さまは「放送業界全体として、データ活用にもっと取り組んでいかなければいけない」という考えをお持ちで、primeNumberにご相談をいただいた所が出発点でした。
もともとラジオ業界において、従来の地上波放送で取る事のできるデータは限定的です。データを見たい時には調査会社を通じてサンプリングされたデータを入手する必要がありました。
そんな中、radikoという、インターネットやスマホアプリでラジオを聞くことのできるプラットフォームが立ち上がり、スマートフォンなどのデバイスを通じた新たな聴取体験が着実に伸びています。また、radiko以外にも、ポッドキャスト、YouTubeなど、ラジオ局が持つコンテンツをさまざまなプラットフォームで展開するようになってきました。
このようにネットでリスナーとの接点を作ると、必然的にデータが取れるようになります。TBSラジオにしてみれば、このデータを活用しない手はありません。広告収入に限らない新たな収益源を開拓していくためにも、その打ち手を探り、効果を検証する上でデータの活用は不可欠で、これを実現するためにprimeNumberが基盤構築を支援しました。
「深く刺さる」ラジオならではの価値をデータで裏付けたい
――TBSラジオではすでにデータ活用の取り組みをされていたそうですね。
はい。TBSラジオはradikoから提供される共通ダッシュボードを通じて、基本的なデータ分析はできる状況でした。また、「radiko viewer」という、radikoの聴取状況を可視化するダッシュボードもあり、スタジオ副調整室でもリアルタイムに聴取状況が確認できる環境が整っていました。
――では、どうして更なるプロジェクトを進めることになったのでしょうか?
より深いデータ分析を行っていくためです。たとえば、当初は、番組ごとに分かれた状態のデータを、ダッシュボードを通じて確認する形になっていました。本来は番組を横断したリスナーの動きを把握したり、生データを用いて機械学習にかけてクラスタリングをしたり……といった、より自由な分析を行いたいという要望があったんです。
特に重要だったのは、BtoBビジネスとしてのラジオ広告の特性でした。テレビと比べるとユーザー数は少ないからこそ、番組のファンの質的な特性をデータで裏付け、スポンサーへの提案力を高める必要がありました。「特定の層に深く刺さっている」というラジオならではの価値を、データでより説得力をもって示したい、というのが富田さまのお考えでした。
――primeNumberはどのような支援を行ったのでしょうか?
大きく2つのフェーズに分けて支援を行いました。
第1フェーズでは、データ基盤の構築に着手。radikoの生ログを取り込み、分析可能な形に加工する必要がありました。聴取ログは膨大な量があり、これを目的に応じた適切な粒度で処理できるよう設計しました。
第2フェーズでは、データソースの拡充と運用支援を実施しました。SNS、YouTube、ポッドキャストなどのデータ統合や、天候情報など外部データの取り込みを行いました。基本的なデータ連携はTBSラジオ社内でも実施できる設計になっていましたが、よりテクニカルな対応が必要な部分については、エンジニアリングの観点から支援しました。
――データ基盤を構築する上で、何か工夫したことはありますか?
今回構築したデータ基盤にはクラウドETLサービスの「TROCCO」を活用しました。これにより、エンジニアリングの専門知識が少なくても運用可能で、基本的なデータ連携はTBSラジオ社内で完結できる設計となっています。新規データソースの追加も容易で、多様なデータの掛け合わせが可能です。
データ分析でラジオを聴く習慣がなかった層も新規リスナーとして獲得
――プロジェクトの成果はいかがでしたか?
データ基盤を構築し、これまでできなかったクラスタリングや、番組間のリスナーの動きの可視化ができるようになりました。
もともとはデータ分析を通じてさまざまなクラスタが見つかることを期待していましたが、実際に見えてきたのは特定の番組に限らず、TBSラジオ全体に強い関心を持つ「TBSラジオファン」という明確な核となる聴取者層の存在でした。これは富田さまにとっては予想外の発見だったそうですが、おかげでリスナー育成の方向性が明確になり、マーケティング施策に活かすことができるようになりました。
リスナーになるまでの、「ラジオを聴く習慣がない層」「ラジオは聴くがTBSラジオを聴かない層」「TBSラジオを聴く習慣がある層」「特定番組のファン層」といったファネルがあるのですが、各層の規模を把握し、それぞれに適した施策を打っていく形をとりました。
たとえば、YouTuberをゲストに起用したケースは「ラジオを聴く習慣がない」層にアプローチする必要がありました。こうした層には、radikoで広告を出してもリーチできません。そのため、番組配信前からYouTubeでradikoのダウンロード方法等を丁寧に説明することで、新規リスナーの獲得につなげることができたそうです。
――今後の展望についてお聞かせください。
TBSグループは、テレビ、ラジオに加え、各種配信プラットフォームでのコンテンツ提供、EC事業など、多岐にわたるサービスを展開しています。こうしたサービスすべてのデータを活用しながら、より効果的なサービス展開につなげていく、そんなお手伝いができたら嬉しいなと勝手ながら考えています。
また、TBSラジオのマルチプラットフォーム展開が進むことで、データソースは今後も増え続けるでしょう。今回構築したデータ基盤はデータソースの追加が容易な設計を採用しているため、こうした拡張に耐えうるものとして、長期的にご活用いただけるのではと思います。
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