
2025年6月27日、primeNumberオフィスのイベントスペース「CC LOUNGE」にて、primeNumber User Group(pUG)主催の「TROCCO新コネクタ使ってみたLT大会」を開催しました。
https://pug.connpass.com/event/355776/
primeNumberでは2024年11月から「CONNECT 100+」プロジェクトをスタートし、TROCCOのコネクタを急速に拡充してきました。2024年11月のfreee会計を皮切りに、SmartHR、Sansan、Stripe、マネーフォワード クラウド会計、Backlog、スマレジ、Okta、Asanaなど、ビジネスに欠かせない多様なサービスとの連携を次々と実現。現在50個近くの新コネクタをリリースしています。
今回のpUGでは、これらの豊富な新コネクタを実際に活用した事例と、それを支える技術的基盤について、3名の登壇者の皆さんに紹介いただきました。
「Backlog ユーザー棚卸しRTA、多分これが一番早いと思います」
DATUM STUDIOの「あれ」(梶谷 美帆)さんは、2024-2025 Snowflake Data Superheroとしても活動する現役データエンジニアです。今回は新リリースされたBacklogコネクタを使ったユーザー棚卸しの効率化について、ゲーム感覚を取り入れた「RTA(リアルタイムアタック)」形式で発表されました。
あれさんはクラウドサービスのユーザー棚卸しをしていないことによる情報漏洩のリスクを強調。「もう退職した人がサインインできてしまう」「管理簿上は利用終了したはずのサービスが実はまだ生きていてサインインできてしまう」といった事態を防ぐため、定期的な棚卸しは必須だと語りました。
とはいえ、この棚卸し作業には手間がかかるため「結構作業に時間がかかってしまう」「私はだいたい一番最後に完了報告してます、ごめんなさい」という梶谷さんの正直な告白に、多くの参加者が共感していました。
あれさんはそんなユーザー棚卸しを効率化する方法として、CSV出力方式と、TROCCOのBacklogコネクタを活用した方法を比較。
CSV出力方式では、Backlogから手動でダウンロードした後DuckDBで加工し、さらにExcelで整形する必要があるだけでなく、最終ログイン時刻などの重要情報が取得困難という課題もありました。
一方、TROCCOのBacklogコネクタを使えば、ワンクリックでSnowflakeに直接データを転送し、SQLで自由に分析できます。実際のデモでは、ユーザー情報とチーム情報を取得し、JSONデータをSnowflakeで整え、最終的にExcelで確認するまでの流れを披露。「サービス管理ツールが使えないサービスでも、TROCCOでユーザー管理ができる」という新たな活用パターンを提示いただきました。
「神店員」のノウハウをデータで可視化 - スマレジコネクタの実力
株式会社シロクの文 翔(カザリ ショウ)さんは、2024年にCyberAgentに新卒入社し、化粧品ブランド事業のデータ組織立ち上げに従事するデータエンジニアです。「N organic」や「FAS」といった化粧品ブランドの直営店データ分析に、スマレジコネクタを活用した事例を紹介いただきました。
スマレジは、いわゆるクラウドのPOS(Point of Sale)システムで、レジを通じて得られた売り上げや在庫、顧客情報を一元管理できる仕組みです。
文さんは直営店のデータ分析について「スマレジは導入されていたものの、各店舗ごとに売上データがサイロ化されていて、全体を俯瞰した分析や施策立案が難しい状況でした」と課題を説明。たとえばある店舗ではスプレッドシートでデータ管理している一方、他店舗ではスマレジから直接POSデータを取得するなど、管理方法がバラバラになっていました。
そこでTROCCOの新コネクタ「スマレジ」を導入し、全国直営店のPOSアプリから販売実績、商品マスタ、来店顧客情報を自動取得・一元化する仕組みを構築。これらのデータをSnowflakeに蓄積し、Lightdashで可視化・分析することで、日次売上レポートやKPIダッシュボードの自動生成を実現しました。
特に印象的だったのは、優秀な販売スタッフのパフォーマンス分析です。なぜそれほどの成果を上げられるのか、そのコツをデータで分析することで接客クオリティの向上に活かしています。文さんは「最近増加しているインバウンド顧客向けの施策にも、さらにデータを活用していきたい」と意気込みを語りました。
店舗運営の現場とも密接に連携していて、プレゼント目的などの顧客情報は、レジでの会計時に店舗スタッフが顧客に確認して入力するというオペレーションが確立されています。文さんの「店舗のプランナーの方がしっかり対応してくださって、本当に感謝している」という言葉からも、現場との協力体制の重要性がうかがえました。
CONNECT 100+を支える技術と、新機能Connector Builder
primeNumberでHead of EL&Tを務めるYamakan(山口 寛)さんからは、CONNECT 100+というプロジェクトを支える技術的背景について解説がありました。
https://speakerdeck.com/kanyamaguc/connect-100-plus-wozhi-eruji-shu
「これほど多くのコネクタを出せるようになったのは、大きく三つのポイントがある」とYamakanさんは説明します。それは開発基盤の強化、プロセスの強化、体制の強化です。
開発基盤の強化では、Embulkのプラグインを転送元HTTPに固定し、仕様書からUI・アプリケーションを自動生成することで、開発サイクルを早めました。
プロセスの強化については、Yamakanさんが入社後すぐに取り組んだクリティカルパス分析による開発フローの最適化が紹介されました。環境取得から仕様策定、リリースまでの全工程を可視化し、チームメンバー全員でボトルネックを特定して対処、最適化する仕組みを構築しています。
体制の強化では、オフショアも含めた開発体制を構築。これによりコネクタを月間8本、最大16本という速度でリリースできるようになりました。
Yamakanさんは、7月1日から正式版の提供を開始した「Connector Builder」についても紹介しました。
https://primenumber.com/trocco/features/connector-builder
Connector Builderは、TROCCO公式で非対応のサービスのほか、自社のAPIで外部には公開できないが接続したいサービスなどに対応したコネクタを開発できる機能です。
従来の転送元HTTPでも独自対応はできましたが都度設定を登録する必要があったのに対し、Connector Builderでコネクタとして登録すれば再利用が可能になります。
データ連携の民主化への期待
CONNECT 100+で目指しているのは「データ連携の民主化」です。従来は技術的ハードルが高かったり、手間がかかっていたさまざまなサービスとの連携が、TROCCOのコネクタによって簡単に実現できるようになりました。そして今後のConnector Builderでは、ユーザー自身が必要なコネクタを作成できる環境も整備されます。実際に新コネクタを用いたユーザーの声や、Connector Builderの紹介から、データ連携先がこれからも拡張していくことを実感できました。
primeNumber PMMの森山さんは「今後はpUGの皆さんとも一緒に、Connector Builderを使った取り組みもやっていきたい。たとえば一斉にカスタムコネクタを作るようなイベントであったり、アドベントカレンダーのような形でカスタムコネクタを作成・発表するのも面白いのでは」という意気込みを示しました。
7月18日にはData Engineering Study第30回記念回も控えています。ご興味をお持ちの方は、ぜひ遊びにいらしてください。
https://forkwell.connpass.com/event/357942/
TROCCOを用いたデータ連携にご興味をお持ちの方は、下記よりお問い合わせください。