
「CRE」という職種をご存じでしょうか。CREとは「Customer Reliability Engineering」の略で、顧客の成功とプロダクトの信頼性向上を目指すスペシャリストです。2016年にGoogleが提唱し、今ではさまざまな企業でCREが導入されています。
primeNumberでも2024年にCREを立ち上げ、顧客の成功を技術的な観点から支援する専門チームとして活動しています。今回はCREチームのメンバーに、立ち上げの背景から日々の業務、今後の展望について話を聞きました。
CREチームは顧客の成功とプロダクトの信頼性を支える架け橋
――はじめに、CREチームがどのようなミッションを持つチームなのか教えてください。
武内:硬い言葉で説明するなら「顧客の成功とプロダクトの信頼性を向上させるために、カスタマーサクセス(以下CS)チームとエンジニアチームの架け橋となり、カスタマーサクセスを組織一丸で継続改善できる状態にすること」です。
役割は大きく2つあります。1つ目は、自社サービスであるTROCCOの品質を組織全体で継続的に改善する状態を実現すること。これはCREチーム立ち上げの経緯にも関わるのですが、TROCCOの新機能に開発リソースが集中しやすくなる中で、不具合やお客さまからの要望といった改善になかなか工数が割きにくいという状態があり、その状況を改善したい! と声をあげて、CREチームを立ち上げてもらいました。それが2024年5月のことなので、もう1年近く前ですね。
具体的には不具合やバグ、顧客からの要望に対して、約2週間でリリースできる課題を一手に引き受けて解決し続けるほか、CSからの緊急度の高い要望や問い合わせ、いわゆる「差し込み」と呼ばれるものにも対応しています。
2つ目は、CSチームの生産性向上を技術的に支援する業務です。先ほどの差し込みの対応に加えて、CSチームが使っているTROCCOの管理画面などの改善を行い、CSがサービスの品質を落とさずに生産性向上するというところに協力するという役割です。
――CREチームが立ち上がるまで、みなさんはどのような業務を担当していたんですか?
武内:私はカスタマーサクセスエンジニアとしてお客さまの対応、技術支援をメインに担当していて、お客さまの要望を受けてプロダクトにフィードバックを行っていました。そうした背景に加えて、先ほどの通りお客さまからの要望を反映できる体制を私がお願いしたこともあって、CREチームに参加しました。
上原:私は入社してから新規開発に長く携わっていたのですが、顧客からの要望にもっとうまく応えるやり方はないか、と考えていた時に、そこに直接的に携われるチームに入れるということでCREチームに参加しました。
吉田:私はCREチーム立ち上げのタイミングでオファーをいただいて業務委託として参加しました。以前の職場では組織全体の設計等を手掛けていて、CREチームを作ったりはしていたのですが、CREの業務自体をやるのは初めてで、エンジニアとして働くのも結構久しぶりです。
岡田:私はもともとTROCCOのコネクタを開発するチームにいました。当時、差し込み対応を一手に引き受けていた方が退職するタイミングで、CTOの鈴木健太さんから「差し込み対応を優先的にお願いできますか」と言われたんですが、お客さまが困っているのを瞬発力高く直していくのが結構好きなので「どんどん回してください!」と答えたんです。そういう流れでCREチームに参加することになった、と思っています。
多様な日常業務をAIの活用で効率化
――CREチームの日頃の業務について教えてください。
武内:とてもいろいろな種類の業務があって一概にこれとは言えないのですが、ざっくりわけるとコネクタのアップデート、既存画面の改修、あとはお客さまから来る緊急の問い合わせ、CSが使うTROCCO管理画面の改修、あとはシステムのエラー検知をクリアにする活動ですね。
――毎月新しいコネクタがリリースされていますが、CREはどのように対応するのでしょうか。
吉田:新しいコネクタが出た時にどういうものが出たかを把握しておくのが最初のステップです。コネクタが出ただけではあまりCREチームで関わることはないのですが、実際にお客さまに利用していただいて、問い合わせやエラーが発生した時にCREチームとして調査・修正していく必要があるからです。
――自分で開発したものではないコネクタのキャッチアップは大変そうですね。
吉田:そうですね。これまでのCREチームとして負荷が高かったのは、なぜこういうコネクタを作ったのか、どうやって作ったかというプロセスに一切関与できていなかったので、キャッチアップや調査に時間がかかっていました。
ただ、最近はAIを活用することで、今まで時間がかかっていたキャッチアップや調査がかなりスピード感を持ってできるようになりました。AIにコードを書かせることもありますし、問い合わせに対してどこが原因でどんな問題が起きているのか、問題が起きている箇所の仕様はどうなっているのかといった調査にも活用しています。
――2024年の冬から「100+」というプロジェクトが始まり、非常に多くのコネクタが毎月のようにリリースされていますが、CREチームの業務負荷に影響はありましたか?
吉田:コネクタの利用状況を詳しく把握してはいないのですが、実際のところ、100+でリリースされたものが直接的に大きな影響を与えたということはないですね。というのも、お問い合わせをいただいたり予期していない事象が発生する可能性が高いのは、公開されてから時間が経っている利用者の多いコネクタや機能なんです。新しいコネクタもこれから負荷が高まっていく可能性はありますが、今のところはそれほどCREとしては影響を受けていません。
――なるほど。実際に使われてから問い合わせが来るということですね。ただ、今後利用が広がれば、時差で問い合わせが増える可能性もありそうですね。
吉田:そうですね、まさにその通りです。
日々寄せられるイシューを優先度をつけてスピーディに処理
――日々の業務はどのような流れで進んでいるのでしょうか?
武内:基本的にはCSや他の部署からオーダーが来て動くという形です。過去から詰みあがっているイシューも含めて、スプリントバックログで管理、優先度をつけながら対応しています。
――通常業務に差し込みが入ったりと運用が大変そうですが、チーム運営で工夫している点はありますか?
武内:課題の優先順位付けが大事ですね。直近で対応するイシューを私がスプリントバックログに登録し、そこから吉田さんが振り分けていくのですが、それとは別に緊急度の高いイシューが発生した場合は優先して対応することで、緊急度の高いイシューが埋もれたり時間がかかってしまうことを防ぐ運用になっています。
それ以外にも実は過去から積みあがっているイシューも80件近くあり、新しい要望と優先順位をつけながら対応しています。
――立ち上げのころから積みあがっていたイシューは対応が難しいからなのか、単にイシューが増えていくスピードが速くて積みあがっていったのかでいうとどちらなんでしょうか。
武内:最初のころはそれがごちゃごちゃで、根が深いものと、手を付ければすぐ終わるものが混ざっていたので、CREチームを立ち上げた直後はその整理から着手しました。「2週間で解決できそうなもの」を基準にして整理して、いまの数まで絞り込んだという形ですね。
――積まれたタスクがあるのに新しいイシューが入ってくるのは大変ですね。
武内:CREに連絡が来たイシューでも、内容によっては他のチームに振り分けたりすることもあるのですべてをCREが対応しているわけでもありません。また、実際に整理していくとそこまで手がかからないものもあったりします。
新しいイシューが入ってこないとそれはそれで寂しいというか、プロダクトの新陳代謝ができないと思うので入ってきてほしい一方で、積み上がってるイシューを減らすことも大事なので、そのバランスを取りながらスループットを上げていきたいと思っています。
チーム立ち上げから約1年で548件の課題を解決
――チームが立ち上がってどのくらいのイシューを解決してきたのでしょうか。
吉田:発足してから解決したもので548件ですね。週あたりで言うと大体10件弱ずつ解決しています。
上原:イシューを可視化するためのダッシュボードも開発しました。週ごとのデータを自動で取得して、どのくらいイシューを処理しているかを可視化しています。差し込みのような緊急性の高いイシューにはラベルをつけて、何日対応に時間がかかったかをモニタリングしています。緊急性の高いイシューは基本的に1日以内に対応できるよう、目標を据えて取り組んでいます。
武内:ダッシュボードのおかげでイシューの状態が分かりやすく、ちゃんと状況を追えるようになっていますね。
――イシューの処理は担当が決まっているのでしょうか。
吉田:イシューが来た時に最優先で対応できるよう、みなさんのタスク状況を見ながら、タスクが来た時にアサインしやすい方に振り分けています。
武内:でも岡田さんは重たいのやりがちですよね。
岡田:誰かが意図的にそうやってやってるわけじゃなくて、僕は引きがいいだけなんですよ。
お客さまのフィードバックやプロダクトの進化を感じるときがCREのやりがい
――CRE業務の中でやりがいを感じる時はどんな時ですか?
岡田:障害対応でお客さまから来る問い合わせは、まさにそのタイミングで困っていることが多いので、それに対して早く対応できた時の反応が一番嬉しいですね。お客さまによっては、わざわざメッセージを送ってくださる方もいらっしゃって。「すごく助かりました」とか言われると感動しちゃいます。
上原:僕も岡田さんに似ているかなと思います。直接顧客とやり取りしているCSチームの方々が、ポジティブなフィードバックをCREにも共有してくださるので、それが自分にとってすごくやりがいになっています。
吉田:今までのキャリアで、お客さまから問い合わせを直接受けるようなポジションにいたことがなかったのですが、CREでは顧客と向き合うため、お客さまが普段どういうことに不便を感じているのか、どこで困るのかが新規機能開発をしている時よりも感じやすいです。それがやりがいですね。
武内:お客さまやお客さまと相対しているCSの方から、自分たちが対応したイシューに対してポジティブなフィードバックをいただけるのはやっぱり嬉しいですね。ただ、個人的にはお声をいただくことも嬉しいんですが、お客さまの声をプロダクトに反映して、プロダクトが進化しているなということを感じられるのが気持ちいいです。
CREでは2週間で終わるタスクをメインにしているので、その分進化を早く感じられると思っています。他のチームだと、例えば1ヶ月から数ヶ月かかることもあると思うんですけど、1個1個の取り組みのサイクルが短いことで、フットワーク軽くできているんじゃないかなと思います。
――2週間サイクルはとても早いぶんずっと終わりがなく続いてしまいそうですが、区切りはどうやってつけているのでしょうか。
武内:チームの振り返りを2週間に1回やっていて、リリースした内容だけでなく、直近2週間であったこと、よかったこと、改善した方がいいことをみんなで話し合って、チームとしての課題やネクストアクションを見つけるサイクルで動いています。終わりがない分、日々の定期的な振り返りは大事ですね。
今後はスループットを高めながらお客さまの本質的な課題を解決
――CREチームはリモートワークが主体ですが、チームのコミュニケーションはどうしていますか。
武内:私と上原さんしか普段オフィスにいないのと、私も上原さんとあんまリアルで会話せずSlackでやりとりしているんですが、全然遠慮なく何でも喋れるし、結構無茶なオーダーや漠然とした質問にも丁寧に返してくれてるので、そこはすごくいい関係だと思っていますし、感謝しているので、引き続き仲良くさせてほしいです。
岡田:2週間に1回の振り返りの場で、いいことも悪いことも出し合っているのがすごくいい場を作っているのかなと思います。もちろん武内さんのキャラクターもあるんですけど。
上原:CREチームはみんな相談しやすくて、チームとしての心理的安全性がすごく高いんと思っています。振り返りの場でも批判を恐れずにいろんな意見を出せるのがありがたいです。
――その環境はどうやって実現できているんでしょうか。
武内 :キャラクター被りしていないのが大きいですかね。私みたいによくしゃべる人がもう1人いたらまた違うかもしれません。
あと、チームの役割とかミッションを明確にしたのが大きいと思います。今いるのは初期メンバーではあるけれど、役割を明確にした上で、それが周知のものとして仕事をしてるので、一体感が生まれているのかなと思います。逆にここがぶれているとみんなの目線がバラバラになってまとまりにくくなると思いますね。
――今後CREチームとしてどんなことをやっていきたいですか?
岡田:TROCCOは解約率が低いので、リリース後のお客さまの対応はもちろんのこと、契約前のお客さまの不満を拾えたら新規獲得率を高められるのではないかと思っています。
吉田:今後より一層TROCCOをさまざまなお客さまに使っていただく流れで、エンタープライズのお客さまが増えていくと、求められるサポート体制のクオリティがどうしても高くなります。そういったところにしっかりと対応していく体制を、CSの皆さんと協力して整えていきたいです。
上原:CREの業務にもっとAIを使って効率化したいですね。現在もAIを使ってかなり業務の遂行スピードが改善されているのですが、これを長いスパンでさらに効率化していって、目に見える形でグラフが上方修正されるのが理想だと考えています。
武内:今はお客さまからのお声をそのままプロダクトに反映しているという部分がありますが、今後はお客さまが抱える本質的な課題ややりたいことを分析して、その結果を形に落とし込むことをCREチームでやりたいです。
また、積まれているイシューがまだ80近くあるので、もっとスループットを出して、お客さまにTROCCOを本当に使いやすいと思ってもらいたいし、日々進化しているプロダクトだということを知ってもらいたいです。
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