
こんにちは、primeNumberです。
primeNumberでは2024年12月から、「素数ラジオ」というポッドキャストを始めました。primeNumberで働く人や社外のゲストを迎えて、業界や働き方といった仕事の話だけでなく、趣味やプロフィールについてもカジュアルにお話しする番組です。
https://note.primenumber.co.jp/n/nd54737c48939
このnoteではprimeNumbeの雰囲気を伝えられるよう、社内イベントのレポートや社員インタビューなどをお届けしていますが、テキストよりも人となりが伝わりやすい音声というメディアを活用することで、テキストとは別の形でprimeNumberを伝える場として立ち上げました。
開始から半年以上が経ち、配信回数も30回を超えて、社内のメンバーだけで無く社外の方々もゲストとして参加いただけるようになりました。時おり「どうやってポッドキャストを配信しているの?」という質問もいただくこともあり、まだ試行錯誤中ではあるものの、私たちなりのポッドキャストの収録環境をご紹介します。
複数のポッドキャストにまとめて配信できて文字起こしもしてくれる「LISTEN」
ポッドキャスト収録の前に決める必要があるのが、「どのサービスを使ってポッドキャストを配信するか」です。1つのサービスに登録すれば誰でも読めるブログと違って、ポッドキャストはApple PodcastやSpotifyといったサービスそれぞれに配信する必要があります。
こうした複数のポッドキャスト配信に便利なのが、「Spotify for Creators」と「LISTEN」です。どちらも自分のサービスだけでなく、Apple PodcastやAmazon Music、YouTubeなどほかのサービスにも配信できますし、もちろんSpotifyとLISTEN同士での配信も可能です。ポッドキャスト番組を配信する際も、1つのサービスを更新すると他の番組にも配信してくれるので、配信の作業が大幅に楽になります。
LISTEN
https://listen.style/
素数ラジオでは、以下の理由からLISTENを配信サービスに選びました。
文字起こし機能
LISTENはアップロードした音声を自動で文字起こしできます。ただテキストにするだけでなく話し手ごとアイコンと名前で自動分類したり、誤字脱字を後から修正することもできます。ポッドキャストは音声で聴いてもらえるのが一番ですが、時間がなくて音声で聴けない、という人もテキストで内容を把握できると好評です。
なお、Spotify for Creatorsも文字起こしに対応していますが、話者分離がないことや、文字起こしが自動生成でテキストを修正できないといった理由から、文字起こし機能についてはLISTENが使いやすいと判断しました。
https://support.spotify.com/jp/creators/article/transcripts/
限定公開機能
LISTENでは一般公開前に限定公開する機能を搭載しています。ポッドキャストに出演してくれた人や、社外のゲストに内容を確認してもらって、カットしたい部分を編集してから公開する、ということが可能です。
一方、SpotifyにあってLISTENにない機能として、Spotifyのユーザー属性を使って男女や年代などを分析する解析機能があります。ただこれはSpotifyのユーザー属性であってポッドキャスト全体ではない(例えばApple Podcastなどの情報は含まれない)ことと、LISTENからSpotifyに配信していればSpotifyの管理画面で見ることができます。
また、LISTENはGoogle AnalyticsやGoogle Search Consoleが設定できるため、再生情報以外にポッドキャストのページがどれくらい見られているのか、どんな検索キーワードで来ているのかを見られます。こうしたアクセス解析の充実もLISTENを選んだ理由の1つでした。
LISTENだけでなく他のサービスでも配信する場合は、それぞれのサービスで個別にアカウントを作成してから、配信先サービスをLISTENに設定する必要があります。こうした他サービスへの登録はLISTENに丁寧にまとめてられているので参考にしてください。
LISTENのポッドキャストを外部サービスに登録する - LISTEN
https://listen.style/document/register_listenpodcast
https://listen.style/document/register_listenpodcast
なお、AppleやPodcastの配信設定は、LISTENで先にポッドキャストが公開された状態でないと設定できません。ポッドキャストが未公開の状態で番組を設定してしまうとうまく配信されないこともあるため、事前準備はアカウントの開設程度にとどめ、LISTENで番組が公開されてから改めて設定することをお勧めします。
さらに気をつけておきたいのがポッドキャストのアイコン画像です。Apple Podcastはアイコン画像を3,000×3,000ピクセルというかなり大きめの画像サイズで設定する必要があり、サイズが正しくないと配信できないことがあります。ポッドキャスト配信あるあるの定番と言っていいくらい陥りやすいポイントなので、画像サイズは気をつけましょう。
https://podcasters.apple.com/ja-jp/support/5514-show-cover-template
マイクやミキサーなど収録に必要なお勧め機材
配信の準備に続いて必要なのが音声収録のための機材です。録音だけならスマートフォンやパソコンのマイクでも可能ですが、音だけで伝えるポッドキャストは音質も大事なので、収録用にマイクなどの音響機材を準備しました。
機材は収録する場所や人数によって変わるため、まずはどんな番組にしたいかを考えます。
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社員がMCとなり他の社員がゲストとなる
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人数はMCとゲストが原則1対1だが、ゲストが増える場合もある
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話がしやすいようオフィスにて対面で収録
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社外のゲストなどオンラインでの収録にも対応する
上記の条件から素数ラジオが選んだのが、ZOOM社のポッドキャスト向けミキサー「PodTrak P4」(以下P4)です。P4の「P」はPodcastを意味しており、さまざまなポッドキャストでも入門機として使われる定番的な機材です。なお、ZOOMという名前ですがビデオ会議のZoomとは異なる日本の会社です。
https://zoomcorp.com/ja/jp/podcast-recorders/podcast-recorders/podtrak-p4/
P4は最大4本までマイクを接続できるので、MC1人のほかにゲストを3人まで迎えて収録できます。また、マイクごとに音声を収録できるため、声が小さい人を個別に大きくしたり、途中で咳き込んでしまった部分をカットするといった調整が可能です。さらにUSBでパソコンに接続するとビデオ会議のマイクとしても使えるので、オンラインでの収録にも便利です。
なお、録音するにはP4のほかに、「XLR」と呼ばれる形式に対応したマイクやケーブルが必要です。マイクについてはライブハウスなどでも使われる定番マイクのSHURE「SM58」を選びました。ただし、SM58は最近かなり値上がりしていることもあり、コストを抑えるのであればberinger「XM8500」もお勧めです。素数ラジオでもゲストの人数が多いときに実はXM8500を混ぜて収録しています。
以下、具体的に必要な機材をまとめてみました。
ミキサー: ZOOM P4
前述の通り最大4人まで個別に録音でき、パソコンと接続してマイクとしても使えるのでオンライン収録にも便利です。
マイク: SHURE SM58(またはbehringer XM8500)
マイクは収録する人数分だけ必要なのでそのぶん値段も高くなります。本数が多い場合はXM8500もお勧めです。
マイクケーブル: CLASSIC PRO MIX010(長さ1m)
ケーブルの長さは0.5mから細かく選べるので、収録環境に合わせて最適な長さを選びましょう。異なる色のケーブルで揃えるとケーブルを見分けやすくなります。
マイクスタンド: Rodmic マイクスタンド
手に持ったままだと大変なので、マイクを固定するスタンドがあると便利です。片付けやすいようコンパクトな製品を選びました。
ヘッドフォン: CLASSIC PRO CPH7000
実際にどのくらいの音で収録しているかの確認に使います。理想は人数分ですが、少なくとも音の確認に1つはあると便利です。ヘッドフォンの中でも原音に忠実に再現する「モニターヘッドフォン」というタイプがポッドキャスト収録にはお勧めです。
SDカード
P4での録音に必要です。それほど大きな容量は必要ありませんが、消さずに残していて容量がいっぱいになってしまったということのないよう、容量には余裕を持っておくことをお勧めします。ZOOMでは公式に動作確認が取れたSDカードを紹介しているので参考にしてください。primeNumberでは128GBのSDカードを使っていますが、1枚で約44時間以上の収録が可能です。
実際の収録の際はマイクやP4を接続、ヘッドフォンで音量を確かめてから録音ボタンを押します。テストの時は実際の収録よりも声が小さくなりがちなので、できるだけ本番さながらに声を出すよう心がけましょう。また、マイクと口の距離が遠いと雑音をひろってしまうので、握りこぶし1つ分くらいの距離で話すのがお勧めです。
P4のディスプレイにはどのくらいの音の大きさかが表示されます。ゲージにはよく見るとメモリがついており、メモリを参考にして音の大きさをチェックするのが便利です。大きくても上から2番目のメモリを超えないくらいに調整しましょう。
P4は前述の通りパソコンにつなぐこともできるため、P4本体で録音しながら並行してパソコンでも録音しておくと、SDカードが壊れているなど何かのトラブルで録音できなかった時のバックアップにもなります。MacであればQuickTime、Windowsであればサウンドレコーダーなど、パソコン標準の録音アプリがお手軽です。
不要部分やノイズ除去など編集できる無料ソフト「Audacity」
録音が終わったファイルをアップすればポッドキャスト配信は完了、なのですが、BGMをつけたり、ノイズや不要な部分をカットするといった編集を入れると番組が聞きやすくなります。
こうした編集には専用ソフトが必要ですが、WindowsとMacの両方に対応しており、無料で利用できる「Audacity」が最初はお勧めです。まずはAudacityで音声の編集に慣れたら、別途有料のソフトを検討すると良いでしょう。
日本語でダウンロードしたい場合はフリーソフトを紹介する「窓の杜」からもダウンロードできます。なお、アプリ自体は日本語表示に対応しています。
https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/audacity/
音声ファイルをドラッグ&ドロップなどの操作でAudacityに読み込み、編集を開始します。Audacityは機能が多彩なため、ポッドキャストに役に立ちそうな操作をいくつか紹介します。なお、以下はWindows版での説明です。Mac版はメニュー表示などが多少異なりますが同じ機能が搭載されています。
音圧(ボリューム)調整
取り込んだ音声ファイルの左側にある「+」「-」のゲージで音圧を変更できます。画面上部のメーターを見ながら調整しましょう。
ノイズ削除
Audacityでは音声ファイルの一定箇所をノイズとして学習し、音声ファイル全体から指定した箇所と同じ音をノイズとして取り除く機能を搭載しています。
まず音声ファイルの中から、人が話していないけれどエアコンのようなノイズ音がする「ノイズ」区間をドラッグで選択、「エフェクト」の「ノイズ除去と修復」「ノイズを低減」を選択します。
「ノイズプロファイルを取得」を選択、該当の箇所をノイズとして学習します。
今度は音声ファイル全体を選択してから同じ手順で操作を進め、先ほどはクリックできなかった「OK」を選択すると、先ほどのプロファイルを「ノイズ」として除去してくれます。このノイズ除去のためにも収録の際は全員が無言のまま録音する箇所を作っておくと便利です。
カット
不要な部分はドラッグで選択し、右クリックの「切り取り」やCtrl+Xなどのキーボードショートカットでカットできます。
フェードイン・フェードアウト
小さい音から少しずつ大きくなるフェードイン、逆に音が小さくなっていくフェードアウトは、「エフェクト」「フェード」から設定できます。後述するようにBGMを設定する場合、番組の最後にはフェードアウトで終了するなどの編集を入れると番組がより本格的になります。
倍速再生
音声を全部聞きながら編集する場合、画面左下の「テンポ」の数字を大きくして再生スピードを上げると効率的に編集できます。このまま保存すると倍速の音声ファイルになってしまうので、編集が終わったら数字を戻すのを忘れないようにしましょう。
ラウドネスノーマライズ
ラウドネスノーマライズは、音量を一定の基準に揃える機能です。この基準を揃えておくと、同じ番組なのに回によって音量が違う、という事態を防ぐことができます。
ラウドネスノーマライズは、「エフェクト」「音量と圧縮」「ラウドネスノーマライズ」から設定できます。数値は配信サービスごと異なりますが、-14LUFSから-16LUFSくらいが主流のようです。素数ラジオでは-16LUFSで設定しています。
なお、素数ラジオで使っているLISTENは、ラウドネスノーマライズ機能を搭載しています。アップロード先にLISTENを使うのであれば、ラウドネスノーマライズをLISTENにお任せするのも手です。
タグデータ
番組情報を設定できる機能です。番組名や出演者、何回目のエピソードかといった情報を設定できます。
BGM
番組の冒頭に「ジングル」と呼ばれる短い音楽やBGMを設定すると番組の個性を引き立てることができます。
BGMは「フリー 音源」などと検索すると無料で使える音源が見つかります。コピーライト表記など必要な場合もあるので、利用に際しての条件は確認しましょう。
また、最近は「Suno」などの生成AIを使ってBGMを作ることもできます。フリー音源は他で使っている番組と同じになってしまうこともあるので、オリジナリティを追求するのであればこうしたAIを使うのもお勧めです。
BGMを追加する場合はAudacityにファイルを追加して音量を調整します。多くの場合BGMはかなり音が大きいので、メインである録音した声が聞こえなくならないよう、ゲージを調整して音を小さくしましょう。
一通り編集が終わったらAudacityの「ファイル」「オーディオをエクスポート」でファイルを出力します。ファイル形式はMP3が容量も小さいのでお勧めです。ポッドキャストで聴くのであればMP3でも十分な音質なこと、AACやWAVはファイル容量が大きくなってしまい、聴く人のデータ通信料も圧迫してしまうためです。ちなみに高音質で名高い人気ポッドキャスト「Rebuild.fm」もMP3で配信しています。
出力したファイルはLISTENの画面からアップロードし、番組名などを設定して公開します。LISTENの公開が終わったらApple PodcastやSpotifyなど他のポッドキャストの配信設定を行いましょう。一度設定すれば次回以降はLISTENを更新するだけで他のサービスにも自動的に配信されます。
LISTENでは「詳細設定」から公開時間を予約することもできます。公開日が決まっているとき、番組のストックが何本もあるときなどにまとめて配信日を設定できるのが便利です。
また、LISTENには話者ごとにアイコンや名前を設定したり、誤字脱字を一括で修正する機能なども用意されています。今回は細かく触れませんが、LISTENのページを活用する場合はこれらの機能も便利です。
以上、素数ラジオの配信環境や制作フローを紹介しました。繰り返しながらまだ試行錯誤中の部分もあるものの、これからポッドキャストを始めてみたい方の参考になれば幸いです。
素数ラジオでは音声というメディアの特性を活かして、primeNumberの魅力をより多くの方に伝えていけるよう続けていきたいと思います。もしよろしければ、ぜひ一度お聞きください。