業種も規模も異なる5社がデータ活用の経験や学びを共有する「わいわいデータミートアップ」参加しました

こんにちは、primeNumberです。

2025年4月10日、東京・築地にあるマイベスト本社で、「わいわいデータミートアップ」が開催されました。

https://layerx.connpass.com/event/348481/

このイベントは、データ活用に関する経験や学びを共有する場として開催されたもので、業種も規模も異なる5社が登壇、それぞれの立場や視点からデータ活用に関するバラエティ豊かな内容が共有されました。

メルカリのデータアナリストがバリューを出すための「業務×スキル」マップ

トップバッターを務めたのはメルカリでデータアナリストを務めるサタニさん。サタニさんは、年々マネージャー的な仕事が増えていく中で、チームが忙しくなるほど現場からは感謝されるものの、経営層からは評価されにくいという、中間管理職の板挟みを実感する日々だったと言います。

現場と経営の「板挟み中間管理職」状態

この課題に対してサタニさんが取り組んだのが、X軸にアナリストが担当する業務、Y軸に必要なスキルを配置した「業務×スキル」のマップ作成でした。

業務とスキルを掛け合わせたマップ

X軸にはアナリストの本業に加えて、会社全体やチーム全体で必要とされる業務を、Y軸には一般的な分析スキルだけでなくプロジェクトマネジメントや定性調査のスキルといった業務遂行に必要なスキルを盛り込み、さらに重要度で濃淡をつけました。

本業だけでなく会社やチーム全体で必要な業務もプロット
プロジェクトマネジメントや定性調査のスキルなど、業務遂行に必要なスキルも盛り込む

この業務×スキルマップにより、全ての業務で重要なスキルを「コアスキル」、一部でしか活用されないスキルを「飛び道具」として識別することで、どのスキルに優先的に投資すべきかも明確になったとサタニさんは説明。「個人が抱えるモヤモヤをチームの課題として整理でき、AIシフトしていく足がかりができた」と語りました。

最後にサタニさんは、「データ職は比較的新しい職種なので会社によって解釈が異なり、同じ会社内でも期待値が違うことがある」と指摘。この期待値の違いを放置するとコミュニケーションや評価のずれが生じるおそれがあり、今回紹介したフレームワークがデータ職の定義に役立てば幸いだと締めくくりました。

業務×スキルマップでチームで取り組むべき課題を可視化

キャズムを超えたビジネスチャット市場でChatworkが目指す新たな仕組み作り

ビジネスチャット「Chatwork」を提供するkubellの池田さんは、マルチプロダクト化を進める同社のデータ戦略と組織づくりについて共有しました。
池田さんははじめにkubellについて「以前はビジネスチャットの会社というイメージが強かったものの、現在はマルチプロダクト化を進めている」との現状を説明。現在60万社、700万ユーザーを抱えるプラットフォームまで成長した次の段階として、ビジネス版スーパーアプリを目指すという中長期ビジョンを示しました。

kubellの事業概要

さらに池田さんはビジネスチャットの普及率が現在約19%とキャズムを超え、ターゲット層が「ビジネスチャットに興味を持つ層」から「新しい仕組みの導入に慎重な層」へとシフトしたと分析。これに伴い売り方もプロダクトアウトからマーケットインやソリューションセリングへ変更する必要があり、マルチプロダクト化はもちろん、売り方を支える仕組みの変更が重要だと強調しました。

今後はマルチプロダクト化に加えて売り方を支える仕組みの変更が重要

新たな仕組みづくりのコンセプトとして池田さんは、「ユーザーが増えてプロダクトが増えた時に、いかにユーザーに対して適切にプロダクトを提供するかというマッチングの精度向上が重要」と説明。60万社、700万ユーザーの利用データによって中小企業の解像度が高まっているのがチャットワークの強みであり、そのデータをユーザー獲得と事業につなげるサイクルを回すのがデータソリューション推進ユニットの戦略だと語りました。

データ分析文化を社内で醸成

今後の展望としては、現在はデータソリューション推進ユニットが全社のデータ戦略を担っていますが、今後は各事業部にもデータ組織を立ち上げるハイブリッド型の組織を目指し、全社的な知見の蓄積と各事業に特化した柔軟な対応を両立を狙います。最後に池田さんは、データソリューション戦略を「利活用」と「オペレーショナルエクセレンス」に分け、BizOps、CRMも含めて距離感の近い組織運営を行っていることが同社のデータ戦略の特徴だと述べました。

定性データを定量データとして活用するカミナシの取り組み

カミナシの右田さんは、「おそらく唯一定性データの話をする人間」と前置いた上で、自社で構築した定性データのための分析基盤について語りました。
カミナシは「ノンデスクワーカーの才能を解き放つ」というミッションを掲げており、工場などの現場を持つ方々向けのサービスを提供しています。神谷さんによれば、日本で働いている人の半分以上はパソコンを使わない環境にいるため、通常は集まらないようなデータを人力で集めて保有していることが競争優位性になっているとのことです。

日本の就業人口の約半数がPCやITを使えない環境で働いている

神谷さんが担当している「設備保全」は、工場の機械設備を整備するためのシステムという非常にニッチな領域のため、設備保全の経験を持つ人が社内にもいない状態でした。また、サービス開始当初は利用者数が10社未満とデータの圧倒的な少なさも課題だったと右田さんは振り返ります。

「設備保全」というドメイン、かつ開発初期のシステムはデータが少ないが
意思決定からは逃げられない

そこで神谷さんはひたすら現場に足を運んでデータを収集。さらにこの定性データを定量データのように扱えないかと考え、Dovetail(オーストラリアのツール)やSento(日本のスタートアップのツール)に着目。CTOと相談の上で、サービス立ち上げ期からツールを導入しました。

現場を訪問して得た定量データを定性データと転用する試み
UXリサーチのためのデータ分析ツール

具体的には定性データを扱うための三層構造を独自に構築。データレイク層では議事録やVoC(Voice of Customer)をとにかく入れ、データマート層では重要なユーザーインサイトを抽出して再利用可能な形にし、これを業務フローと組み合わせてアクションにつなげるという流れを作りました。

訂正データの三層構造を定量データに転用

神谷さんはこの仕組みについて「お客さんからの評判も良く、社内でも業務効率化にもつながった」とコメント。さらに、デザイナーもエンジニアもカスタマーサクセスもセールスも全員が同じ情報を見られるようになったことで組織内の透明性が高まったことも大きな成果だったと振り返りました。
最近ではお客様も増えてきたことで「そろそろ定量データも扱う段階」と考え、ヘルススコアなども活用しながらカスタマーサクセスに取り組んでいるとのことです。将来的には設備保全に使われた写真や故障事例などのデータをLLMに学習させて活用していきたいという展望も語りました。

今後は定量データも扱うフェーズに

Layer Xが考える「こんなデータマートは嫌だ」

Layer Xでアナリティクスエンジニアを務める高際さんは、「こんなデータマートは嫌だ、どんな?」というタイトルで、データマート構築について発表しました。

お題

一つ目の問題として「ドキュメントがない」という問題を指摘。シンプルでもいいので目的、用途、ユーザー、主キー、カラムの説明を日本語で書くことが重要だと強調し、「3ヶ月後の自分のためにもなるし、利用者も増えるというメリットもある」と補足しました。

ドキュメントがないデータマートの問題点
きちんとドキュメントを書くことは自分のためにも利用者のためにもなる

二つ目の課題である「汎用性が低い」は、集計済みのデータマートの問題点として、月単位でデータを集計すると月内での変化や直近10日間といったデータが見られなくなる点を指摘。同様に「カテゴリーでピボット済み」も大きな問題であり、新たなカテゴリや商品を追加するときにテーブル設計が壊れるなど様々な課題が出てくるため、こうした設計は避けるべきだと強く主張しました。

汎用性が低いデータマートの例
月次の集計とカテゴリーでピボットしたデータの課題

これらの問題に対する解決策として、高際さんは「目的と用途を明確にしよう」と提案。何のデータを取得したいのかをあらかじめヒアリングで明確にすることが有用なデータマート設計につながり、用途の範囲で粒度を最小に保つことで、効果的な分析ができるとしました。

目的と用途を明確にした上で粒度を最小に保つことで効果的に分析できる

もう一つの重要なポイントが「ピボットしない」こと。これは新カテゴリーが増えた場合、行が増えるだけで簡単に対応できるためです。「ピボットしたい場合はBIツールで簡単にできるので、データマート設計の段階で難しいSQLを書く必要はない」と高際さんは説明しました。

三つ目の問題として高際さんは「クエリがカオス」という率直な表現で、理解しにくいクエリの問題を取り上げました。理解しやすいクエリにするには、省略せずに明確に書くことが大切であり、例えば「sales_202311」のような名前は避け、より明示的な命名をすべきだと高際さんは提案しました。

カオスなクエリの例
読んでわかる名前の付け方の例

高際さんは最後に「ここまで聞いてくれた方は今がベストではなく、もっと良くできると思っているはず」とコメント。「あなたが作ったデータマートは、間違いなく事業や組織を前に進めてきたはず。『こんなデータマートは嫌だ』なんて言って申し訳なかった」と謝罪した上で、「今回のLTが少しでも参考になれば嬉しい」と語りました。

Slackの業務ログを分析して組織の状況を客観的に把握

マイベストの内藤さんは、「All You Need Is Kusa」というタイトルで、業務ログデータの分析価値について発表しました。

マイベストは「ユーザーの選択をサポートするサービス」として、洗濯機などの製品を実際に検証して比較できるサイトを運営しています。モバイルバッテリーなど20個以上の製品を実際に購入して独自のスコアリングを行っているのがユニークな点だと内藤さんは説明しました。

実際に商品を購入して独自に調査するのがマイベストの特徴

内藤さんは参加者に向けて「本当にデータ活用していますか?」と問いかけたのち、「事業やプロダクトのデータ分析は多く語られる一方で、チャットワークやSlack、Notion、Googleサービスといった普段の業務ログはあまり分析されていないのでは」と指摘、具体的に自社のSlackデータを分析した事例を紹介しました。

チャットや社内ドキュメントなどの業務ログは活用されていない
社内のSlackで効果や影響を定量化して分析

具体的には、マイベスト社内でのデータチームの立ち上がりをメンション率で分析、社内のデータリテラシー向上を「データ」「分析」「統計」などのキーワード出現頻度で測定、マイベストのキャラクター「ベスくん」の評価をスタンプの使用頻度で分析、といった事例を紹介。単純にSlackでのメッセージ中のスタンプやキーワードの出現頻度を時系列で見るだけで様々な発見があったと説明します。

社内のデータチーム立ち上がりやデータリテラシ向上の分析結果
キャラクターの浸透率や、社内で「草」スタンプが出現する頻度も調査

これらの例を通じて業務ログの分析では、「データチームの立ち上がり」「データリテラシーの向上」「新キャラクターの定着」などが定量的に確認できたと内藤さんは語りました。また、こうした分析は特別なツールがなくても実施可能で、組織の状況を客観的に把握するのに非常に役立つと提案しました。

プロダクト以外のデータを単純に観測するだけでも学びは多い

「データ活用の道はどの会社も試行錯誤の連続」というイベント趣旨通り、各社の発表からは試行錯誤の中でいかに最大限の価値を引き出すかという実践的なノウハウが語られました。とりわけ印象的だったのは単なるテクニカルな話だけでなく、組織文化や人材育成、コミュニケーションの課題にも焦点が当てられていたことです。

プレゼンテーションはもちろん、その後の懇親会もイベントタイトルのような「わいわい」とした雰囲気の中で、データ活用にある現場の経験や声をたくさん学ぶことができました。開催いただいた運営のみなさま、ありがとうございました。